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Akira Kikuchi startup story

· STORY

「インタビュー読むの飽きちゃいました」という声。ですよね、わかります。これ読んでください。社員インタビューを小説第二弾です!最強のNo.2を目指す男の苦悩と葛藤。

「こっちに移ってきてからもう1年半か・・」

仙台のワイモバイルショップの休憩室で、菊池はカップラーメンをすすっていた。

ゴクリとスープを最後の一滴まで飲み干した瞬間、菊池の胸ポケットが震えた。

慌てて電話に出ると、菊池の上司からだった。

「今、うちで新しい事業を展開しようとしているんだ。その新規事業で、お前にトップに立ってもらいたい。東京に帰ってこい」

そう早口に伝えられた。

今後のことを考えていた矢先だったこともあり、二つ返事で快諾した。しかし、軽い足取りで東京に戻ってきた菊池に対する会社の態度は、冷たいものだった。

告げられたのは、仙台にいたときと変わらない業務。「話が違うではないか」と、喉元まで文句が出かけていた菊池であったが、上司に楯突いたところで、自分の望む結果が返ってくることがないことは、当の本人が一番よく理解していた。

東京都内での初稼働の日のこと。

ソフトバンクショップの休憩室で、菊池はカップラーメンにお湯を入れようとしていた瞬間、胸ポケットが震えた。

「あちっ」あまりに突然のことで、出そうとしていたお湯が指にかかってしまった。

画面に表示されているのは「細田」という名前だった。あまりに懐かしい名前に「お疲れ様です。」という最初の声がうわずる。

細田との出会いは、仙台に派遣されるよりも以前のことだった。当時の細田は、アドバンサーという聞いたこともないような名前のスタートアップ企業にジョインしたばかり。確か、ウルマートというスマートフォンの買取事業の立ち上げを一人で行っていたはずだ。あの頃の細田の熱意に菊池は魅了され、スマートフォンの買取事業を手伝った。

当時は仕組みもきっちりとできておらず、何かとトラブルが多かった。緊急用のため、細田と電話番号を交換していたのだった。まさか、こんなタイミングでかかってくるとは。

「あ、菊池さん!お疲れ様です。東京に戻ってきたって聞きました」

軽快に話す細田の口調は、当時のままだった。それにしてもどうして自分の居場所を知っているのかは謎だった。

「今からお昼休憩なんですよ。俺も一緒にお昼いいっすか?」

相変わらず軽快な口調で、細田は問う。ノーとは言えず、お湯の入っていないカップラーメンの蓋を閉めて、端をテープで止めておいた。今日の夜食にでもしようかな。

近くのファミレスで菊池と細田は向かい合っていた。頼んだ食事が届くのを待っていましたと言わんばかりに、細田は話し始めた。

「菊池さん、うちの会社こないっすか?一緒にやりましょうよ!」

菊池の返事も待たずに、細田はアドバンサーという会社について熱く語った。細田の熱で、長時間たっても目の前のスープは冷めなかった。

菊池は、新規事業の統括の話をトンズラされた直後だったこともあり、ゼロベースで事業を作っていくことに興味があったタイミングだった。細田のプレゼンは止まらない。アドバンサーという会社の、細田の描くこれからの未来に、菊池は惹かれた。

それなら、一緒にやってやろう。

とは言え、業務内容は以前の会社と変わらなかった。

ただ、気持ちが違った。細田と共に働く日々は、これまでの淡々とした毎日とは比べ物にならないほど、充実したものだった。この会社には、未来がある。菊池はそう確信していたのだ。

菊池は、とにかく細田への連絡を怠らなかった。出勤すれば電話、休憩時間に入れば電話、退勤すれば電話。とにかく、ナンバー2として、細田の思考を理解しておきたいと考えていた。気がつけば、愛する彼女よりも一日の通話時間が長くなっていた。

細田も、最初のうちは緊急事態かと思い、電話に出てくれていたのだが、だんだんと電話に出なくなっていった。しかしその頃には、菊池は細田が何を考えているのか、把握できるようになっていた。もはや、菊池にとって細田の存在は、彼女をも凌駕していた。

そんな毎日がしばらく続いたころ。ちょうど桜が散り始めたころだった。菊池は、店舗に入るだけでなく、案件獲得の仕事も任せられるようになっていた。先方からのクレーム対応に加えて、店舗での稼働。正直、手が回らなくなっていた。

これを機に、菊池は案件獲得、つまり営業に専念できるようになっていった。

しかし、菊池を襲ったのは「閑散期」。今まで取れていた仕事が、突然そっぽを向くようになったのだ。菊池のもてる知見、人脈、全てを駆使しても、案件が取れない。運よく案件を獲得できても、クレームの嵐。

そんな時、なんとかしてお金を生み出そうとして、菊池が選んだのは、外販。持ち前のトーク力で顧客獲得を狙いに行くが、またもや菊池を襲ったのは閑散期という言葉。一人で販売を続けたが、1ヶ月経過しても売り上げはゼロ。100万円近くの赤字を出してしまった。

結局、店舗稼働へと逆戻りだ。せっかくのチャンスを無駄にしてしまった。赤字まで。閑散期なんていう言葉は言い訳に過ぎない。菊池は悔しさのあまり、カップラーメンさえも喉を通らない日々が続いていた。

しかし。やるしかない。菊池は、以前アドバンサー内でボツになっていた派遣事業に目をつけた。利益率を考え、派遣事業の話はなくなっていたのだ。しかし、今の経営状況を打破するには、これしかない。

菊池は寝る間も惜しんで、アドバンサーの経営状況、派遣事業を取り入れた際の見込める快復率などを洗い出した。そして、細田へと打診した。とにかく細田が納得するように、これまでの細田の傾向を加味した文章を書いた。こんなに長いラブレターを書いたのは人生ではじめてのことだった。

菊池の訴えに、細田は快諾。菊池のこれまでのラブコールが実った瞬間だった。そこからは、菊池の思い描いていた通りの展開になった。菊池の存在がなければ、アドバンサーで派遣事業が開始されることはなかったのだ。

「菊ちゃんチルドレン」と呼ばれる、可愛い仲間たちもできた。弟のように可愛がる毎日だ。菊池は今日もカップラーメンをすすっているがあの時よりも美味しく感じるのは、きっと気のせいではないだろう。

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